大場谷地の花図鑑2

(本頁は「八幡平・大場谷地の花1」の続きです。)

【初夏の花】(続き)
六月も下旬になると、コバイケイソウやレンゲツツジが咲き出し、湿原はまた賑やかさを取り戻す。
コバイケイソウやレンゲツツジの群生
2015/06/24

レンゲツツジ Rhododendron molle subsp. japonicum
2015/06/24
コバイケイソウ Veratrum stamineum
(シュロソウ科) 2015/06/24

なおコバイケイソウは花がさっぱり咲かないで葉茎だけ茂る年もある。これは開花でエネルギーを消耗したせいだと言われるが、
三、四年のタームで復活する。同じような現象は後出のニッコウキスゲでも見られる。

晩春から初夏にかけて咲く花は他にイワカガミ、ツマトリソウ、ミツバオウレン、ツルコケモモ、アブラガヤ、ミタケスゲなどを見ているが、写真は省略。


【盛夏の花】
ある年、友人から、大場谷地のワタスゲが凄いことになっている
との話を聞き、駆け付けてみたら、ご覧のような有様だった(詳細はこちら)。
ワタスゲの群生。黄色はニッコウキスゲ、赤はレンゲツツジ。
2009/07/06

ワタスゲ Eriophorum vaginatum の実
2015/06/24
ワタスゲの古花
2010/06/15

この湿原にワタスゲが有ることは認識していたが、こんなに密に咲いた(厳密には、実が成った)のを見たのは初めてだった。
何十年も欠かさずこの湿原に通っている方もこれほどの開花(厳密には、結実)は初めてとのこと。
ワタスゲの開花結実にも極めて長いタームで周期性があるのかもしれない。

七月のハイライトはニッコウキスゲ。
ニッコウキスゲの群生
2009/07/06

ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)(ワスレグサ科)
Hemerocallis dumortieri var. esculenta
2011/07/19
サワラン Eleorchis japonica
この湿原には他にもラン科が生えているが、今回は省略。
2011/07/19

ニッコウキスゲの仲間はディリリーとも呼ばれるように、花の命は一、二日と儚い。しかし、次々と咲くので、割と長期間愉しめる。
なおユリと似たような花だが、最近のDNA分類体系ではユリ科でなく、ワスレグサ科に変更されていた。

オニシモツケは日本海側地方ではあたり前の植物だが、大場谷地では大群生している。
オニシモツケ Filipendula camtschatica
2011/07/19

モミジカラマツ
Trautvetteria caroliniensis var. japonica
2011/07/19
モウセンゴケ Drosera rotundifolia
2014/07/22


食虫植物モウセンゴケはここでは湿原の中には少ないが、湿原脇の土手(硫気孔のある裸地)にはアカモノと一緒に群生している。
パイオニア植物の側面を持っていることを改めて知る。


【晩夏から初秋の花】
夏も終わりに近づくと、湿原には花が少なくなる。と思ったが、それも間違いだった。
地味だが、比較的珍しい花が咲いている。
クロバナロウゲ Comarum palustre
1998/08/04

クロバナロウゲの花アップ
1998/08/04
アオモリアザミ(オオノアザミ)
Cirsium oligophyllum subsp. aomorense
2014/09/03

クロバナロウゲは「黒花狼牙」と書く。チョコレート色の花だけでなく、水湿地に生える点でも、バラ科としては異色の存在だ。
北海道に多く、本州では中部以北の高地湿原に分布しているとされるが、お目にかかることは少ない。
八幡平の湿原には比較的多く、大場谷地は好い観察地になっている。
アオモリアザミはノハラアザミの北方型と言われる。秋田では秋田市付近を境に北側に多い。低地から高山まで広く見られ、
夏の終わりから雪が降る頃まで咲き続ける。

湿原の奥、アオモリトドマツの林下で。
サンカヨウの実
実は食べられるが、けっして美味いものではない。
2013/08/02
ヒロハユキザサの実
この後に実は真っ赤に熟す。食えるかどうかは不明。
2014/09/03

湿原なのにここにはトリカブトが意外に多い。
オクトリカブト Aconitum japonicum ssp. subcuneatum
2011/08/29

真夏以降の湿原の定番植物。

コバギウシ Hosta sieboldii (キジカクシ科)
2015/08/05
ミズギク Inula ciliaris
2011/08/29

初秋の湿原風景
2014/09/03

ミヤマシシウド Angelica pubescens var.matsumurae ?
エゾノヨロイグサ Angelica sachalinensis
2011/08/29
ハンゴンソウ Senecio cannabifolius
2014/09/03

サラシナショウマ Cimicifuga simplex
2014/09/03
エゾオヤマリンドウ
Gentiana triflora var. japonica subvar. montana
2014/09/03

秋田の山で見かけるリンドウはずっとエゾリンドウ Gentiana triflora var. japonica だと思っていたが、花付きが悪く、茎の先だけに固まって咲く傾向がある。
よってエゾオヤマリンドウとしたが、いかがなものだろうか。
晩夏から秋にかけて咲く花は他にゴマナやアキノキリンソウも見ているが、写真は省略。

湿原に生える樹木は、ハクサンシャクナゲやウラジロヨウラク、アカミノイヌツゲ、オオカメノキ、マルバマンサクなど多数あるが、写真は省略。
代表して、サワフタギを。
サワフタギ Symplocos sawafutagi (実)
2007/10/06


花図鑑シリーズ・小目次
 早坂高原の花図鑑(1.六月〜七月上旬)  ・・・(2.七月中〜下旬)  ・・・(3.七月下旬〜八月上旬) 
  ・・・(4.八月中〜下旬)  早坂高原の花図鑑(5.九月〜、おわりに)  
 男鹿寒風山の花図鑑1(春〜夏)  男鹿寒風山の花図鑑2(夏〜秋) 
 焼石岳の花図鑑1.六月編  ・・・2.七月編  ・・・3.八月編  ・・・4.秋田斜面、南本内岳編  ・・・5.紅葉、いにしえ編  
 森吉山の花図鑑1  森吉山の花図鑑2 
 鳥海山の花図鑑1初夏編  鳥海山の花図鑑2盛夏編  鳥海山の花図鑑3晩夏〜秋編  鳥海山の花図鑑4北東斜面編 
 秋田駒ヶ岳の花図鑑1.初夏編  秋田駒ヶ岳の花図鑑2.盛夏編  秋田駒ヶ岳の花図鑑3.晩夏〜秋編 
 早池峰山の花図鑑1.初夏編  早池峰山の花図鑑2.盛夏編  早池峰山の花図鑑3.晩夏〜秋編 
 月山の花図鑑1.初夏編  月山の花図鑑2.盛夏編  月山の花図鑑3.晩夏〜秋編  月山の花図鑑4.弥陀ヶ原、いにしえ編  
 八幡平・大場谷地の花図鑑1  八幡平・大場谷地の花図鑑2  


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(本頁は2019年1月4日にアップしました。)