焼石、そしてリメイク版

はじめに

焼石岳って知ってますか。岩手県の南西部、水沢や北上あたりを通ると、新幹線の窓から西の方に見えます。
もちろん在来線や東北道、国道4号線からも見えますが・・・。
ただしベコ(牛)が寝そべってるようなとりとめの無い山容なので、あまり印象に残らないかもしれませんね。
この山、実は秋田県側の平野部からも見えます。私の実家のある横手平鹿地方に行くと、東の奥羽山脈の前山越しにどっしりとのびやかな姿を覗かせております(わざわざその為に見に行くほどのことはありません。右写真をどうぞ)

右写真: 横手市十文字町(私の実家の近く)から見た焼石山塊。1992/05/27


ところで、私の地元では、焼石岳の知名度は今ひとつ・・・
どころかふたつもみっつ。地元のヒトに聞くと、
「アレッすんただ山、おらほさあったっけがー」(邦訳:あれっ、そんな山、私たちの郷土にありましたかな)ってな具合。(^^;
ましてや焼石岳に登る人は稀であり、よほど物好きか変わり者でないと・・・(いくらなんでもそこまではー(^^;))
斯様に風采も上がらず、人気も無い山ですが、 いざ登ってみると、その素晴らしさには誰しも圧倒されるはず。
何がそんなに素晴らしいのか、それは追々語るとしましょう。
私の焼石岳登山歴は精々10数回程度なので、たいしたことを言える立場ではないのですが、隠れたる東北の名山・焼石岳の素晴らしさを、少しでも多くの方と共有出来たらと願い、筆をとった次第。

と書くとすぐにも行ってみたい。はやる気持はわかりますが、そこはぐぐっとこらえて、次の『焼石岳の花の特徴』をお読み下さい。


焼石岳の花の特徴

『焼け石に水』という格言があります。意味は違いますが、焼石岳は水気の多い山です。
山腹、特に東側斜面はむちゃくちゃ積雪が多く、これは日本海側第一線にあり、超大量の積雪で知られる月山や鳥海山の東側斜面にも匹敵するほどとか。
ですから、真夏はもちろん、年によっては、秋の新雪期まで、雪渓として残り、遠く水沢辺りからも確認できるほど。
この雪解け水が斜面を流れ落ちる関係で、登山道も川のようになります(特に中沼コースは山靴の他にゴム長も必須)
豊富な水のおかげで、山腹には湿原や池沼が発達し、湿性植物が極めて豊富。至る所でみごとなお花畑を展開しています。
場所によっては、まるで尾瀬に迷い込んだような錯覚をすることも。

南本内岳山頂近くのミズバショウ、リュウキンカの群生。背景の山は三界山。
1994/06/12
焼石岳山頂近く、姥石平のお花畑。
1994/06/12

かと思えば、山頂近くの乾いた草原には、全く別タイプの高山植物が咲き乱れ、時期によってはまるで花筵を敷いたような景観を呈します。
上下の姥石平の写真をご覧下さい。どうです。この花風景、とても1500m程度の山岳とは思われませんね。
緯度が高いので、高山帯が下がっていることは確かですが、それだけでは、説明できない現象です。
日本アルプスで同様な光景に接するとなれば、少なくとも更に1000m以上、すなわち2500mくらいの高さまで登らなければなりません。

6月の姥石平。
白い花はハクサンイチゲ。黄はミヤマキンバイ。紅紫はミヤマシオガマ、コイワカガミなど。
1992/06/27

鳥海山や早池峰山のようにその山にしかないと言う特産種、固有種が焼石に無いのは、残念無念ですが、
植物の種類はとにかく豊富です。
こうなったのは、ひとえに旦那の浮気じゃなく、先に述べたように雪や水の影響が大と思われます。
また一応、火山ですが、山体が古く、至る所に大小の凸凹地形があり、凹地の多くは湿原や沼になっています。
このような複雑な地形と、その結果生じた多様な微環境が、大昔、広く分布していた北方系植物のシェルター(避難場所)として機能しているのでしょうか。

焼石は、近隣の栗駒や秋田駒、岩手山など新しい火山とは、植物の種類が随分と違います。
かえって遠く離れた月山、朝日、飯豊など日本海側の高山や、遥か遠く北アルプスの白馬岳あたりと共通の種類が多いのは意外です。
北アルプスでは普通だか、他の東北の山では珍しい、しかし焼石では当たり前と言う種類を挙げてみます。
ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、アラシグサ、キヌガサソウ、ミヤマシオガマ、ムカゴトラノオ、イワオウギ、タカネナデシコ、タカネセンブリなど。
また数は少ないですが、キバナシャクナゲやクロユリもあると言われています(私は見ていない)

ミヤマシオガマ。
廻りにハクサンイチゲや咲き残りのユキワリコザクラも。
1994/06/12

北海道では普通だが、本州ではこの山が南限と言われる植物に、
ウコンウツギ、チシマフウロ、オクキタアザミなどがあります。
サトイモ科のヒメカイウ(姫海宇)も長野県の志賀高原で発見されるまで、分布の南限と言われておりました。
また日本海要素と言われるオニシオガマ、チョウジギク、ハクサンオオバコ、タテヤマウツボグサなども豊富です。これは奥羽脊梁にありながらも、日本海側高山並みに雪が多いことの証しです。
しかし、雪が多すぎると、今度は無くなる植物もありまして・・、
その代表がアオモリトドマツ(オオシラビソ)。焼石では、アオモリトドマツに代表される亜高山帯針葉樹林が欠如しているので、ブナ林からいきなりダケカンバ林や高山帯を思わす景観の低木林、場合によっては草地に移行します。この辺の事情は近くの栗駒山や和賀山塊、秋田駒ケ岳、日本海側の鳥海山や月山、朝日、飯豊連峰などと共通です。

(^^;)柄にも無く学術的な話をしてしまいました。さあ、いよいよお花見登山に出かけましょう。

次は『6月いきなり姥石平』です。花筵で遊んでみましょう。

右写真: 南本内岳山頂近くのオニシオガマ群生。 1993/08/24
























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