2017年カムイミンタラ花紀行2
7月27日、銀泉台から大雪山・赤岳、小泉岳へ(3)

(本頁は「7月27日、銀泉台から大雪山・赤岳、小泉岳へ(2)」の続きです。)

突然、赤岳山頂。
赤岳山頂(2078m)とあるが
本当の山頂はもっと北東にあるようだ。

赤岳山頂からの眺めは素晴らしい。
まずは北側、反時計回りに。
手前、烏帽子岳(2072m)と左奥に凌雲岳(2125m)。

北鎮岳(2244m)と右、凌雲岳(2125m)。

大雪山No.2の北鎮岳は雪形が印象的だ。
北鎮岳(2244m)

遠くの山は左、旭岳(2290m)と右、北鎮岳(2244m)。
中央部やや手前は松田岳や北海岳(2149m)。

大雪山、いや北海道の最高峰、旭岳もしっかりと見えた。
後旭岳(2216m)と旭岳(2290m)。手前は赤岳沢の源流部。

赤岳沢の源流部。
左奥の山は白雲岳(2230m)、右奥に旭岳(2290m)や松田岳、北海岳(2149m)など。

山よりも赤岳沢の源流部の地形がダイナミックで凄い。
この沢はやがて流星の滝となって層雲峡に落ち、石狩川と合流する。

小泉岳(2158m)と右奥に白雲岳(2230m)。

小泉岳や白雲岳方面の眺めはパッとしないものの、時間に余裕があるので少し歩いてみることにした。
赤岳から先には茫漠たる風景が広がっていた。
小泉岳(2158m)の茫漠たる風景

大雪山は高山植物の宝庫なので、見渡す限りのお花畑を連想する方も多いと思うが、この山域はそうではなかった。
高山帯とは言っても、本州の高山とは全く異質の風景で、一見、砂漠のようにも見える。
近づくと砕けた岩のかけらがびっしりで、その合間に極めて背の低い草や木(矮性低木)が疎らに生えている。

このような場所を何と呼ぶのだろうか。手持書籍(北海道新聞社・発行、大雪山の自然2 高山植物)だと、
「風衝地」と書いてあったが、自分の知る風衝地(例えば月山山頂付近や秋田駒ヶ岳阿弥陀池付近)とは植物が疎らな点であまりにも違い過ぎる。
強いて同様の場所を探すとしたら、構造土地形が発達する鳥海山の御田ヶ原付近だろうか(こちら参照)。
しかしこちらはスケールが違い過ぎる。
北鎮岳(2244m)と右、凌雲岳(2125m)。

まだ行ったことはないが、昔、地理の教科書で習ったツンドラとかヒースとはこのような場所を指すのか。
一応、先の手持書籍に従い、「風衝地」と呼ぶことにした。
遮るものの無い風衝地では強風、乾燥、低温、土壌(礫)の移動、強い紫外線など過酷な自然条件に耐えうる植物だけが生育出来る。

以下、この風衝地で出会った花たちを列記してみるが、
一番バッターはキバナシオガマ。
キバナシオガマ Pedicularis oederi var. heteroglossa

キバナシオガマ Pedicularis oederi var. heteroglossa
の終わり花
ヨツバシオガマ Pedicularis japonica

キバナシオガマは国内では大雪山でしか見られない植物(国外では北半球の高緯度地域で見られる)。
大雪山でも小泉岳から白雲岳付近にかけて多いと聞いたので、今日のルートで最も期待していた花のひとつだったが、
ほとんどの花が終わった後だった。もう十日くらい早く来るべきだったかもしれない。
同属のヨツバシオガマは東北地方の高山にも多く、けっして珍しいものではない。今日のルートでは銀泉台の下の樹林帯から生えており、
途中の湿った斜面などあちこちで見かけていたが、キバナシオガマのすぐ隣、風衝地にも咲いていたので敢えてここに載せてしまった。

ホソバウルップソウは世界中で此処だけ。
大雪山の固有種であり、キバナシオガマと並んで今回、期待していた花だったが、こちらは残念。全ての花が終わった後だった。
ホソバウルップソウ Lagotis yesoensis

ホソバウルップソウ Lagotis yesoensis (僅かに残り花) エゾハハコヨモギ Artemisia trifurcata var. pedunculosa

東北には全く無い高山植物のオンパレードが続く。
地味な花については、予習して行っても戸惑うばかりだった。

エゾハハコヨモギとエゾイワツメクサも世界中で此処だけ。大雪山の固有種と聞く。
エゾハハコヨモギ Artemisia trifurcata var. pedunculosa

エゾイワツメクサ Stellaria pterosperma

エゾイワツメクサ Stellaria pterosperma エゾタカネツメクサ Minuartia arctica var. arctica

エゾタカネツメクサは北海道の高山限定種のひとつ。
大雪山の他には夕張岳や日高山脈にも有るようだが、現実には行く機会は無いだろうからここでしっかり見て行くことにする。
なおよく似たイワツメクサやタカネツメクサは以前、北アルプスで見かけている。この仲間は東北の高山を飛び越えて分布している。
エゾタカネツメクサ Minuartia arctica var. arctica
左上にエゾオヤマノエンドウ Oxytropis japonica var. serice

エゾタカネツメクサを撮ったら、大雪山固有種(世界中で此処だけ)のエゾオヤマノエンドウが偶然にも左上の方に写っていた。
残念ながら花は終わっていた。

先のキバナシオガマ、ホソバウルップソウも含めてこの三種類のちゃんとした花に遭遇するためには
少なくとも七月中旬頃までにもう一度、この場所に来る必要がある。

クモマユキノシタやメアカンキンバイは北海道高山限定種。
クモマユキノシタ Saxifraga laciniata

メアカンキンバイSibbaldia miyabei / Potentilla miyabei
青みを帯びた葉やレモンイエローの花がすがすがしい。

そろそろ小泉岳頂上かなと思ったら・・・
小泉ジャンクション(分岐点)の標識だった。


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(本頁は2018年1月10日にアップしました。)