早池峰山の花図鑑2.盛夏編

(本頁は「早池峰山の花図鑑1.初夏編」の続きです。)

【盛夏の花】

この項では、おおむね七月いっぱいに見かける花を扱ってみた。
この時期、一番目立つ花は、やはりハヤチネウスユキソウだと思う。
この山のシンボルとも言える重要な植物なので、四枚も写真をアップすることをお許し願いたい。

ハヤチネウスユキソウの咲く様。手前にミヤマヤマブキショウマ、奥にタカネクロスゲなど。
2017/07/20

ハヤチネウスユキソウ Leontopodium hayachinense
2017/07/20
咲き出したばかりのハヤチネウスユキソウ。
2017/06/29

ハヤチネウスユキソウと手前にミヤマオダマキ。
2017/07/20
ウスユキソウ Leontopodium japonicum
ハヤチネ・・・に較べると、高貴さには欠けるが、
厳密には花期に根生葉が無い点などで識別する。
2017/07/20

ハヤチネウスユキソウは早池峰山の固有種だが、この山にはこの仲間(ウスユキソウ属)がもう一種、ウスユキソウも咲いている。
ミネウスユキソウとする説も有るが、区別がつかないので、ここでは母種のウスユキソウとした。
一合目の森林限界付近で遭遇するのはこのウスユキソウの方で、ハヤチネ・・・はもう少し上、三合目付近から見られるようになる。
ハヤチネ・・・の形態は日本海側高山(鳥海山〜飯豊山)に多いミヤマウスユキソウによく似るが、花も草丈も明らかにでかく、丈が30センチを超えるものも有った。

盛夏の早池峰山には、ハコベやツメクサのようなナデシコ科も多い。
花も小さく、地味だが、早池峰山を特徴づける植物で、東北ではこの山だけと聞く。

ホソバツメクサ Minuartia verna var. japonica
右に咲くのは、ウスユキソウ。
2017/07/20

カトウハコベ Arenaria katoana
蛇紋岩植物。早池峰以外は夕張岳、戸蔦別岳、至仏山だけ。
地味なので見過ごされやすい。
2017/07/20
たぶん
シラネニンジン
Tilingia ajanensis
2017/08/03

ミヤマアズマギクは盛夏にも多く見られる。

ミヤマアズマギク Erigeron thunbergii subsp. Glabratus
2017/07/20

ムシトリスミレ Pinguicula vulgaris
2017/07/20
ナンブトラノオ Bistorta hayachinensis
2017/07/20

ナンブトラノオも早池峰山固有種だ。
開花期に幅があり、早ければ六月から、遅いものは九月でも咲いている。
岩の隙間や草地に疎らに生え、↓のように群生するのは比較的珍しいかもしれない。

ナンブトラノオの小群生
2017/07/20

少し地味な花も。
ネバリノギラン Aletris foliata
2017/07/20
チシマゼキショウ Tofieldia coccinea だろうか。
2017/07/20

オオカラマツ(コカラマツ)
Thalictrum minus var. stipellatum
ハヤチネカラマツとの説もあるが、今回はオオカラマツとした。
2017/07/20
タカネサギソウ Platanthera maximowicziana だろうか。
2017/07/20

(小田越コースの)五合目付近まで登ると、今まで見なかったような花が現れる。
サマニヨモギは(国内では)北海道以外には早池峰山と八幡平の一部だけと聞く。

サマニヨモギ Artemisia arctica subsp. Sachalinensis
ヨモギの仲間は風媒花と思っていたが、この花にはしきりとハナアブなどの虫が訪れていた。
虫媒花と見做して良かろうと思う。
2017/07/20

サマニヨモギの近くでは、見慣れぬフウロソウの仲間が群生していた。
チシマフウロだが、今まで見たものとは花色が異なり(やや青みが強く、淡い)、丈も低かった。
北海道には多いが、東北の山では白神岳や焼石の一部を除けば稀な花。

チシマフウロ Geranium erianthum
2017/07/20
チシマフウロの白花タイプ
2017/07/20

花の終わったホソバイワベンケイ(雌株)
とウラシマツツジ。
2017/07/20
マルバシモツケ Spiraea betulifolia
2017/07/20

ミヤマヤマブキショウマは早池峰の固有変種(母種は低山にも多いヤマブキショウマ)。
ここでは森林限界から山頂まで広く分布している。

ミヤマヤマブキショウマ Aruncus dioicus var. astilboides
2017/07/20

早池峰山で不思議なのは、
途中の岩だらけの斜面には他の山では見られない珍しい花ばかりなのに、
いざ山頂稜線に着くと、それらに加えて、他の高山でもよく見られる花が続々と登場する点だ。
他の山では比較的低い所から見られるものが、ここでは山頂部限定、高嶺の花になっている。
湿ったお花畑をはぐくみやすい山頂部の地形のせいもあるが、なんか他の山とは逆転しているような印象を抱いてしまう。

ヨツバシオガマ Pedicularis japonica
2017/07/20
ハクサンチドリ Dactylorhiza aristata
2017/07/20

イワカガミ Schizocodon soldanelloides
2017/07/20
カンチコウゾリナ Picris hieracioides var. alpina
2017/08/03

キンロバイは園芸植物としても使われるバラ科の低木だが、自生品にはなかなか巡り合えない。
早池峰山では一合目の森林限界付近でよく見かける。

キンロバイ Dasiphora fruticosa
例外は有るが、蛇紋岩の山に多い傾向がある。東北ではここと焼石くらいだろうか。
2017/07/20

盛夏に咲く花では、他にコバイケイソウ、ハクサンシャクナゲ、ウコンウツギ、オオカサモチなどが有るが、今回は見逃してしまった。
またイネ科で早池峰山固有種のザラツキヒナノガリヤス、蛇紋岩植物のナンブソモソモも見逃している。
なお奥羽山系や日本海側高山でよく見かけるヒナザクラやイワイチョウ、キンコウカなどの雪田性、湿地性のフロラ、
並びにニッコウキスゲやトウゲブキは早池峰山には産しないようだ。ハクサンフウロは有るが、量は少ない。


次(3.晩夏〜秋)へ行く。
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(本頁は2019年2月1日にアップしました。)