月山の花図鑑1.初夏編 |
東北には花の名山が多い。敢えて優劣をつけるならば、世界的にも他の山では見られない花(固有種)がいっぱい有る点で、東の横綱は早池峰山だろう。
対する西の横綱は、鳥海山か月山、はたまた朝日か飯豊かで迷ったが、個人的には月山とした。
理由は花の種類数、量がすこぶる多いこと。また(朝日、飯豊のように)難儀しなくても、足弱の私でさえ多くの花が見られる点も評価したい。
本図鑑は、月山のそれも一般的な登山コースの羽黒コースと姥沢コースで見られる花を主体とした。
少数だが、両コースだけでは、見られない花も有るので、湯殿山コースと石跳川流域の一部、そして弥陀ヶ原の木道も歩いてみた。
掲載順は便宜上、開花が早いものからとしたが、なかなか一筋縄ではいかない。果実や紅葉が顕著な一部の植物はそれが見られる時期にも再登場させている。
なお植物名の同定にあたっては、既存の高山植物関係の図鑑以外に、土井信夫・著、「月山の花」(文化出版局)(絶版)をおおいに参考にさせてもらった。
それでも間違いはあるかもしれない。お気づきの方は遠慮なくご指摘頂きたい。
肘折温泉入り口付近から望んだ月山
2018/05/27
【初夏の花】
年によって幅があるが、概ね六月から七月中旬頃にかけて咲く、或いは咲き出す花たちを扱ってみた。
ただし開花時期は種類によって、また場所によって、大きな幅や違いがある。
例えば、ミヤマクロユリやミヤマシオガマのように、限られた期間にだけ、判で押したように咲くものもあれば、
ハクサンイチゲのように、六月上旬から咲き出し、七月には終わったかと思うと、ダラダラと晩夏や秋に二度咲きするものもあったり、
雪田に特有なヒナザクラのように、六月だろうが、九月だろうが、生育地の雪が融けさえすれば、
フレッシュな気分で咲き出すので、こうなると始末に終えない。
が、まずは始めてみよう。
姥ヶ岳付近のハクサンイチゲ群生。
2015/06/07
ハクサンイチゲ Anemone narcissiflora var. japonica
咲き出したばかりの姿。
2015/06/07ミヤマクロユリ
Fritillaria camtschatcensis var. keisukei
右隣に咲く地味な花は
タカネクロスゲ Scirpus maximowiczii だろうか。
2015/07/05
クロユリ(厳密にはミヤマクロユリ)は月山の名花、看板のように扱われているが、最近はとても少なくなった。
その理由は盗難や生育地への踏み込みなど人為的なものかと思っていたら、意外にもネズミの食害によるものらしい。
生育場所は山頂神社の西側エリアに限られていることから、これは本来の自生ではなく、昔、修験者などが他の高山から移植したものではないかとの説もある。
東北では、クロユリの見られる山は極めて少なく、他には焼石岳や飯豊山くらいと聞く。ただし簡単には見つからない場所のようだ。
一般人が簡単にクロユリに会えるのは、やはり月山か。その意味でも、生育地での早期回復を祈っている。
なお昔撮った手持ち写真の中に、いっぱい咲いていた頃のものが数枚有った。その写真をラストの頁に並べているので、
興味のある方はどうぞ。⇒ こちら
ミヤマシオガマ Pedicularis apodochila
開花は七月上〜中旬限定。
2015/07/05
初夏の月山のもうひとつの愉しみは、色鮮やかなミヤマシオガマの存在だ。
この花は日本アルプスと北海道の一部に有るが、東北では、早池峰山、羽後朝日岳、焼石岳、船形山、そしてこの月山だけと聞く。
後出のヨツバシオガマに似ているが、開花時期、葉の形や付き方、花の形などで区別して欲しい。
ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)
Leontopodium fauriei
2015/07/05ミヤマウスユキソウ
とキバナノコマノツメ Viola biflora
2015/07/05
ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)もエリア限定色の強い植物で、東北地方の高山のみ。
奥羽山系では秋田駒ヶ岳くらいか、日本海側は鳥海山から飯豊山まで割と豊富だ。群生の規模では朝日連峰には敵わないが、
月山はそれに次ぐくらいの規模ではないかと思っている。
ミヤマキンバイ Potentilla matsumurae
2015/06/07
ホソバイワベンケイ Rhodiola ishidae
2015/07/05
ヤマガラシ(ミヤマガラシ) Barbarea orthoceras
2015/07/05ウズラバハクサンチドリ
Dactylorhiza aristata f. punctata
2016/07/16
月山にはふつうのハクサンチドリの他に、葉にウズラのような斑点の入ったものもよく見かける。
斑点が薄いなど、中間的なものもあり、ハクサンチドリとの線引きは難しいが、花付きは疎らで丈が低い傾向あり。
チングルマ Geum pentapetalum
2016/07/16
イワカガミ Schizocodon soldanelloides
2015/06/07
イワウメ Diapensia lapponica var. obovata
月山ではあまり多くない。
2015/06/07
ヒナザクラ Primula nipponica
2016/07/16ミツバノバイカオウレン(コシジオウレン)
Coptis trifoliolata
2015/07/05
ミツバノバイカオウレン(コシジオウレン)は、秋田県から石川県にかけての日本海側高山に限定の花だ。
ヒナザクラ同様、雪田地帯に特有で、開花は生育地の雪が融け次第。よって真夏以降に咲くものも見かける。
なお月山には近縁のミツバオウレンも豊富に見られる。
シラネアオイ Glaucidium palmatum
2015/06/07エゾイチゲ(ヒロハヒメイチゲ)
Anemone yezoensis
2015/06/07
エゾイチゲは北海道に多いアネモネの一種だが、本州では何故か月山にだけ分布するようだ。
なお月山には近縁のヒメイチゲも見られる。
キヌガサソウ Paris japonica, Kinugasa japonica
装束場付近にて。
2016/07/16
キヌガサソウは以前なら登山道沿いのあちこちで見られたが、最近は減って来た。
盗掘なのか、はたまた温暖化の影響でササに圧迫されているのか、理由はよくわからない。
上の写真は七月中旬に撮ったものだが、新鮮な花を見るなら、上旬の方が良いだろう。
ゴゼンタチバナ Cornus canadense
2015/07/05ツガザクラ Phyllodoce nipponica
2015/07/05
アオノツガザクラ Phyllodoce aleutica
2015/07/05
ツガザクラの仲間は、月山には三種類ある。
量的に多いのは、アオノツガザクラで、初夏から盛夏にかけて、どこかしらで咲いている。
ツガザクラは山頂部で僅かに見られるだけで、(北アルプスで見かけたものに較べ)丈や花がとても小さい。
エゾツガザクラは月山が南限と言われる。こちらも量は少なく、姥沢コースの限られた場所でしか見られない。北海道のものに較べると、花色が淡い。
エゾツガザクラ(エゾノツガザクラ)
Phyllodoce caerulea
2016/07/16ハクサンシャクナゲ
Rhododendron brachycarpum
2015/07/05
ウラジロヨウラク Menziesia multiflora
2016/07/16
マルバシモツケ Spiraea betulifolia
場所により、八月以降も咲いている。
2015/07/05ミヤマホツツジ Cladothamnus bracteatus
場所により、八月以降も咲いている。
2016/07/16
比較的開花時期の早いものでは、他に
ショウジョウバカマ、ミネザクラ、ミネズオウ、ノウゴウイチゴ、ズダヤクシュ、コバイケイソウ、ハクサンハタザオなども見ているが、写真は省略。
次(2.盛夏編)へ行く。 管理者注:本頁の写真は(`◇´)何人たりとも無断使用はまかりならん!
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(本頁は2019年1月19日にアップしました。)